舟越保武作品集・オリジナルエッチング一葉付//収録作品の数もかなり少なくして自分のやや気に入っている作品に絞った

商品説明
舟越保武作品集・オリジナルエッチング一葉付//収録作品の数もかなり少なくして自分のやや気に入っている作品に絞った

昭和57年- 160P 二重箱。ゆうメール・レターパック規格外 部数は少なそうです。資料用にもいかがでしょうか。

作品集に色刷りを使用しなかったのは私のケチとは関係ない。黒と白の作り出す階調の美しさが最高のものだと私は思っているから。
収録作品の数もかなり少なくして自分のやや気に入っている作品に絞った。彫刻について写真を何枚かずつ乗せて違った光違った角度から見られるようにしてもらった。
私の下手な文章をダラダラ加えてこれは蛇足のようにも思ったが私の作品が舌足らずなのでそれを補いたいとの願いがあった。作品集を作ることは大変なことだとつくづく思う。立体のものを平面の黒と白の階調に翻訳するカメラの仕事それを編集してまとめる仕事その人たちの真剣な努力に心打たれた


『ロダンの言葉』という一冊の本が、私を彫刻家にさせてしまった。 まととに簡単な動機であった。 私が中学三年のとき、東京の高等工芸に行っていた私の兄がこの本を買って来てくれた。 このフランス綴じの白い小さな本を手にしたとき、私の彫刻家志望が決まったようなものである。 『ロダンの言葉』高村光太郎編訳、叢文閣版、 とあるとの一冊が、私をとりとにしてしまった。東北の田舎で 育って彫刻というものをまるで見たこともない私にとって、この本は珠玉のようであった。何べん繰り返して読 んだことか。あちこちの部分を暗記してしまった。

「フィディアスとミケランジェロには平伏せよ」「水の滴りが石に穴をうがつよう辛抱づよくあれ」「遅いとい うことは美しい」等々。
今にして思えば、高村さんの訳文の美しさが、私を感動させたようである。 紙質もあまりよくなく、ロダンの顔と作品の写真が七、八枚しかのっていなかったのだが、多感な少年時代の 私は、最大の宝を発見したように興奮した。 「これだ、これ以外にない」と思った。

しかし、その当時、彫刻家になって暮らして行けるはずはないし、もっと堅実な道を、ということで私は兄と 相談して美校の師範科に受験した。二年続けて失敗した。兄はあきらめて「やはり彫刻科に受験するか」と言っ てくれた。待ってましたとばかり、翌年は彫刻科を受験して合格した。この時から兄貴のやせ脛を私は永年かじ ることになった。

彫刻科に合格したといっても、十五人の定員に十七人受験したのだから落ちたのは二人だった。今の受験地獄 から思えばウソのようであった。
セネカという石膏像のデッサンが試験に出て、しょぼくれたような老人の胸像であった。 その試験で落ちた二人のデッサンを私は今でもよく覚えている。一人は木炭紙のまん中より下の方に小さく頭 を描いたので、 胸の部分が紙面に入らなくなって、顔から下を横にひん曲げて描いてあった。 シャガールの絵 みたいで、あれはもしかしたら天才だったかも知れない。


お好きな方、お探しの方いかがでしょうか。

品ですので傷・黄ばみ・破れ・折れ等経年の汚れはあります。輸送箱傷、小汚れ。ご理解の上、ご入札ください。もちろん読む分には問題ありません。187822